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医療大麻治療記 (大麻ライターKAZU)

大麻ライターKAZU  (フリーマガジン「I am CBD」など、カルチャー系媒体で執筆中)

初めましての方もそうでない方もこんにちは。大麻ライターKAZUです。日本でCBDの雑誌などを作っているので、知っている方もいらっしゃるかもしれません。紆余曲折あり、今はタイで自身の治療をしながら、医療大麻に関するお仕事をしています。

以前からタイに移住を考えていたのですが、去年5月末に事故に遭い、原因不明の頭痛と闘う毎日を過ごしていました。もともとストレートネックや軽いヘルニアはあったのですが、それでは説明のつかない痛みと筋肉の強張りが残り、日本での仕事も遅れ、ずっとタイ行きがのびのびになっていました。何件も病院をめぐり、何度もCTやMRIを撮影し、脊椎系の専門病院に行っても原因は不明。鎮痛剤がなければ、まともに仕事もできないような状態で、明け方になると薬が切れて頭痛で目が覚めるという毎日でした。後半は、痛みのストレスから脱毛症も発症してしまい、どうしたらいいものかと悩んでいました。

しかし私もCBDやカナビスを中心としたライターを何年かしており、交通事故の残存症状などに、医療大麻が活用されていることはよく知っていました。タイは仕事で行くつもりでしたが、これは逆にタイに行って、自身の治療をしながら仕事をした方が良いのではないかと思い、2月からタイに移住ベースで渡航しました。

医療大麻と交通事故

アメリカなどでは、交通事故のむちうち症状や、その他の様々な痛みに対して医療大麻が活用されています。それには医療大麻が持つ、いくつかの特異な性質が関係しています。今回はその中でも、大麻の特異な性質の一つでもある、「ゆるめる」という効果がキーワードです。

この「ゆるめる」という効果は、日本ではあまり知られていません。例えば、姿勢が悪くなってそのまま固まってしまったような筋肉は、動かすと痛みを伴うような症状になると、正しい位置に戻すことが難しくなってしまいます。温めたり動かしたり様々な対処方法がありますが、その一つに大麻による緊張緩和があります。固まった筋肉をやわらかくほぐしてくれる薬は、実はそんなに多くありません。

では固まったものを緩めると、どんな良いことが起こるのでしょうか。まずはそもそもの痛みとなっていた強張りを、ほぐしてくれます。そして筋肉の緊張緩和が起こると、正しい位置に戻した運動療法が行いやすくなります。ねじれや不自然な位置で固まった筋肉を自然で可動しやすい位置へ戻していくことで、根本的な痛みの原因にアプローチしていくことが可能です。

また、大麻自体に鎮痛効果や抗炎症効果もあるため、不自然な位置で痛みを伴っていた筋肉を緩めると同時に、鎮痛し、炎症を沈静させます。これらは、もともと人間の体に備わっている機能を、外因性カンナビノイドを利用することで、それぞれ効果が出ます。またこの刺激によって、内因性カンナビノイドの復調も期待できます。

同じような種の難治性疾患で言えば、関節炎や緑内障、多発性硬化症の治療にも、医療大麻は利用されます。大麻は、筋肉や神経、免疫などをニュートラルに、「ゆるめる」方向で働くことが多いですが、緊張状態から通常の状態へ移行させるスイッチのようなもの、と考えるとわかりやすいかもしれません。

ともあれ、今回は私が事故で首周りの筋を痛めてしまい、そこから頭痛と首・肩のこりに悩まされていました。およそ10ヶ月の間に、大きな病院だけでも複数、個人のクリニックも含めて様々に回りました。あるクリニックでは精神科を勧められ、痛みは精神的なもので、実は痛くないのではという先生もいらっしゃいました。整体や整骨も自費でも長く通い、よくなったり悪くなったりを繰り返しながら、鎮痛剤はかなりの期間服用しました。

新しい椅子を買ったりデスクを変えたり、温泉やストレッチなど、思いつくものは全て試したと思います。それでも改善がない時は、けっこう絶望的な気持ちになります。そんな時は正直、日本にいる間も大麻が使えればと思うシーンはありました。ですが私は、大麻やCBDのことに仕事として関わると決めてから、日本では大麻を持たないようにしています。

こういった症状に対して大麻が使われていることを知っていて、かつ法令遵守をしようと思えば、日本では激しい自己矛盾に苛まれることになります。誰よりその良さを知っていながら、それを伝えるために自制せねばならない、そういった矛盾を抱えたストレスは小さくありませんでした。

タイに渡航し医療大麻を使った結果

ではタイに渡航して、いったいどのような利用をしているか、少しご紹介します。体の歪みやそこから神経系などの痛みがある場合、大麻オイル服用とマッサージ、タイミングで喫煙の大麻を医療用として摂る、というのが一般的な治療になります。

喫煙は、頭痛などの痛み軽減と、眼精疲労の改善が目的です。タイでは様々な大麻の品種がありますが、フラワー(バッズ)はCBD優勢の良い品種が手に入ったのでそれを主に利用しています。オイルは1日に2ml程度をエディブルで摂ります。一部塗っても利用しますが、日常的にはオイルを服用し、痛みが出たり筋肉緊張が強い際は喫煙します。

喫煙の方が痛みを抑えたり、筋肉の緊張を緩和するスピードが速いため、症状が出た場合は、後に仕事などが控えてなければ2服ほどパイプで喫煙します。足りない時は追加で摂取することもありますが、多用すると一時的に判断能力や反射神経などが落ちるので、日常的に大量服用することはありません。

このような形で1ヶ月タイで治療した結果は、前の10ヶ月も悩んだ痛みをかなり軽減してくれています。頭痛にはなっても悩まされることが0になったので、仕事の調子も少しずつ戻りつつあります。日本で体調が悪い際は、起き上がることが難しい日もありました。少なくとも頭痛や眼精疲労などは大麻で、体の歪みは整体的なマッサージなども併用し、体調はかなりよくなってきました。もちろんまだ完全ではありませんが、日本にいた時よりも、はるかに体が楽な日が多く、少し辛くなってもリカバーする方法があるので、絶望的な気持ちになるストレスはなくなりました。

事故の残存症状の痛みなどを、ごまかしながら仕事を続ける方は日本に多くいます。日本で医療大麻が合法になると、このような慢性的な痛みや疾患に悩む方が、改善される可能性が大きくあります。社会的には、社会保障費や医療費の低減、病院側でも人件費コストの低減、そして何より、治療を受けた方の社会生産効率が良くなることが知られています。

医療大麻から見える日本の問題

日本では一般的に知られていないだけで、効果や仕組みをきちんと知れば、医療従事者ほど大麻の有用性に気づくことが多いです。世界を見渡せば、G7は全て医療大麻が合法。医療大麻が違法なのは日本だけで、国連から強い非難勧告を受けながら、国際社会とは真逆に舵を切るような政策には疑問が残ります。

そこから起こっている社会・経済被害は大きく、社会保障費や税金の上昇にも寄与しています。規制を厳しくすれば、社会経済に受け入れられないほどのダメージを負うことはよく知られています。日本は大麻規制に関して、それだけでは済まない、取り返しのつかない大きなダメージを受ける方向へ、政策の舵を切っています。

激しい円安や世界一ともいわれる税負担、それに見合わない低い社会保障。これらは実は、医療大麻の無知な規制と、根本は同じ問題です。それは、「日本人の政治への無関心と無視」が大きく横たわっていて、社会への無関心という子供のような国民性を浮き彫りにします。

話がそれましたが、そんな日本では医療大麻を使った療養ができません。しかし厚生労働省は、「海外で医療目的で大麻を使用したとしても、合法国内であれば違法ではない。帰国時にTHCが検出されても、使用罪は適用されないし、所持していなければ逮捕要件にならない。」と答えています。北米、ヨーロッパでも医療大麻による治療は可能ですが、コストが高くついてしまう。タイであれば現実的なコストで治療可能で、私にとってもベストな選択だったと感じています。

日本の法律がいつ世界に追いつくのかはわかりませんが、現実に今、辛い時間を過ごす方に、少しでもこの情報が届けばというのは切に思います。あなたの病気は、世界ではすでに難治性でなくなっているかもしれないということ、そしてその治療手段を禁止するのは、人権侵害であることを。そしてそのために海外で大麻を使ったとしても、立派な世界最先端の医療で、日本に帰国して罰せられることもないのです。

同じような悩みを持つ方へ

筋肉が強張って痛い、長く寝違えたような状態が続いている、関節炎、多発性硬化症や緑内障、癌など、医療大麻はおよそ270種類の病気に対して適応があり、緩和ケアではQOLの向上にも医療大麻は役立てられています。もちろんその全てが特効薬的なものではありませんが、現実には大麻でしか治せない病気、大麻の方が予後が良い、回復が速いものも多いです。

私が10ヶ月も悩んでいた痛みや緊張も、ひと月ほどでかなり緩和しました。あなたの悩みを、大麻が解決できるかはわかりません。ですが、日本の医療という枠組みを少し外れて考えると、私のように解決できるものもあります。大麻はその可能性が一番高い薬かもしれません。もし興味があれば、ご自身でもぜひ調べてみてください。そして、機会があればぜひ治療を受けてみてください。

私もまずはきちんと療養し、自分の体をしっかりと治すことを優先しています。痛みでどんどん生産性が落ちていることを自覚しながら、効率悪く仕事をしなければいけないのは、本当にストレスになります。まずは日本に一時帰国しても問題ない程度までは、療養を続けるつもりです。そしてきちんと体の準備を整えて、次のステップへと進みたいと思います。

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